石井光太 『神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く』
イスラームの国で、男と女はどのように裸体を絡ませあっているのだろう。
街角のスラムにいる少女の売春婦は、何を思って体を売っているのだろうか。性同一性障害の人たちは、どうやって暮らしているのだろうか。一夫多妻が受け入れられる理由は何なのか。道端にあふれる乞食は、どこで交わっているのだろうか――。
これから私はそうした疑問を解き明かすために、東南アジアから中東に至る地を旅しようと思う。
イスラームの世界が、私たちの眼前に現実感をもって現れたのは、二〇〇一年の九月十一日以降のことだった。テロリズムという言葉とともに報じられたその世界は、保守的で男性中心のそれとして提示された。
女はベールを被り、家の奥に押し込められ、親が決めた相手と顔も知らないまま結婚させられる、といわれている。奴隷のような女性と銃をもつ荒々しい男、という構図がイスラーム世界そのものだった。
しかし、これらは固定観念に過ぎないのではないか。いつの世にも、完璧に清い世界などありえないし、すべての男女が同じ関係を築いていることなどありえない。それは日本人男性が全員「侍」ではないし、女性が全員「大和撫子」ではないのと同じことだ。
にもかかわらず、私たちの耳や目に紋切型の情報以外、入ってくることはない。連日、イラクやアフガニスタンでの出来事が報道されているというのに、そこでは戦場における野蛮な男と不遇な女という画一的な世界しか映しだされないし、語られない。
それはきっと、メディアがイメージだけでイスラームを見ているからなのだろう。人が一人ひとり異なる体をもち、異なる思いを抱き、異なる行動をとるものだという当たり前のことを忘れて、都合のいいように物事を解釈しているのだ。
今回、私がイスラームの清潔な性というものを問うてみたいと思った動機は、そこにある。堂々とはびこる建前だらけの情報に対して、とにかくうんざりし、いら立っていた。その象徴がイスラームの性だったのである。<冒頭より>
筆者は中東を旅しながら、イスラームの戒律とも、"清潔な性"ともかけはなれた現実を目にすることになる。父親が娘を殺し、妻が夫を殺し、弟が兄を殺し、警官が物乞いを殺す。10歳に満たない子供たちが、誘拐され、男の子も女の子も、体を売り、暴行を受ける姿を見る。「イスラームとセックス」という、もしかしたら日本人にとってはもっとも見えづらい世界を、徹底的に現地の人びととつきあってきた作者を通して知ることができる作品だ。
事実のみを記し、解釈は読み手にゆだねるノンフィクションの主流に沿わず、かなり主観をあらわにして書いている。傍観者にならず、作者から仕掛けるアクションとその余波を中心にすえるという点では、沢木耕太郎の『深夜特急』を思わせる。売春宿の娼婦やスラムの子供とともに暮らし、首をつっこみ、作者と彼らとの関係をえがいていく。宮本常一の『忘れられた日本人』に収録されている「土佐源氏」をオマージュにした「問わず語り」も面白かった。
宮本常一 『忘れられた日本人』
どれも脳裏にこびりつくような描写ばかりだったが、ミャンマーの国境に位置する、バングラデシュの田舎町の話も壮絶だった。数年前に外国資本の工場ができたこの地では、ほとんどの男が働き手として取られてしまい、女ばかりとなってしまった。男なしでは、イスラームの戒律に沿った、村の伝統的な暮らしが成立しなくなってしまう。そこで、ミャンマーからの難民(ロヒンギャと呼ばれる)の男を夫として迎えるが、生活はうまくいかず、夫は都会に仕事をしに逃げてしまう。数年後、夫は娘を人買いに売るため戻ってくるが、妻は子供を守るために夫を殺してしまう。。。
外国資本の工場!!日本企業は東南アジアに、網のように工場を進出させている。「現地で雇用を生む」という、美しい文句を大義にして。
「世界」という概念をどこまで認識するかは、人によってちがう。その人の生活圏内だったり、市とか国とかいう行政単位を便宜的に利用する人もいるだろう。ただし先進国において、ベトナムの工員がつくったポロシャツを着て、インドの漁民がつくったエビをスーパーで買って、9歳の少女がガーナのカカオプランテーションで収穫したチョコレートを食べているということが、田舎と都会にかかわらずどこにも現実としてあるならば、どうして彼らを無視することができるだろうか。
自分たちの暮らしが、途上国で貧困にあえいでいたり、体を売ったり、殺したり殺されたり、誘拐したりされたりしなければならない人たちと無縁ではないことを、彼らの暮らしをつぶさに知っていくことで、意識すべき時代にいるのだと思う。自分の暮らしも、イスラームの売春宿で働かなければならない人たちと、とても見えづらいが、しかし悲しいことに無関係ではないことを、つながった「世界」に生きているということを、この本を読んでつよく感じた。
目次
第1章 街娼たちの渇愛―インドネシア/パキスタン(夜会;婆;兄弟の秘め事;禁じられた舞踊)
第2章 異境を流れる者―ヨルダン/レバノン/マレーシア(月の谷の女;死海の占い師;堕天使)
第3章 家族の揺らぎ―バングラデシュ/イラン/ミャンマー(人さらい;砂漠の花嫁;問わず語り)
第4章 掟と死―パキスタン/アフガニスタン/インド(銃声の子;花の都の裏切り者;切除;水の祈り)
第5章 路上の絆―バングラデシュ(浮浪児の渇き;幼い乳)

3 comments:
瀬古さん研修生してますねー!
俺も、もう一回行きたくなってきました ↑
と、言うことで誕生日おめでとうございます!!
オレもベトナムでは裸を重ね合わせてきたわ。研修でベトナムに行くかもしれん。
「livesex.com」をgoogleで検索してみ。すごいから。すごすぎてYahoo!Japanでは検索でけへん。
瀬古やんやったらもう知ってるかな。
@Shotaさん
おそくなりました。ありがとう。
Shotaって、たぶんクリリンのことですよね。
ぼくの22歳は外人でした。
23歳もずっと現役の外人でいるつもりです。
@優作さん
エロのスパムメールThanks!
クリックするごとに、いくらか振り込まれるんですよね。ぴったりのバイト見つけましたね。
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